抗酒剤の服用について

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抗酒剤の服用に対する私の意見

  抗酒剤には、短期決戦型のシアナマイドと、遅行型のノックビンがあります。
  シアナマイドは、水薬で服用後すぐに効果が現れますが、効果は1日で消失します。ノックビンの場合、効果が現れるのに長い人の場合3日程度かかり、その効果は長ければ1週間持続します。

  シアナマイドはアセトアルデヒドの分解酵素ALHDの働きをブロックするものですから、短期決戦型になります。一方、ノックビンはALHDと結合してアセトアルデヒドの分解効率を低下させるものです。ノックビンの場合服用中に生成されるALHDと結合するのに時間を要しますが、新たなALHDが生成されるまでその効果が持続するのです。

  アルコール専門医が抗酒剤を処方する場合、シアナマイドとノックビンを併用する場合が多いようです。(専門書には併用を勧める記載がありました。)
  抗酒剤を服用してお酒を飲んだ場合の害は、お酒の量が少なくとも大量飲酒をしたのと同じ結果になると思います。大量飲酒の害は、肝臓や循環器への過負荷と脳細胞へのダメージがあります。抗酒剤がアセトアルデヒドの分解を阻止すれば、アセトアルデヒドと言う毒素が体内に長時間残されることになります。

  生まれつきお酒を飲める、飲めないは、分解酵素ALDHの型によって決まる遺伝的なものです(NN型はお酒に強く、ND型は少しは飲める人、DD型はほとんど飲めない人)。お酒が飲めない人でも肝臓病になります。少量の飲酒でダメージが大きいのです。お酒に強い人が抗酒剤を服用してお酒を飲むと、生まれつき飲めない人よりは多くのお酒を飲んでしまいやすく、飲めない身体にして飲むのですからダメージが大きくなるのは当然の結果です。

  循環器系へのダメージも、お酒を飲めば顔が赤くなったり、青くなったりすることで察していただけると思います。(血圧も上昇します。)
  脳細胞の破壊も考えられますが、別に依存症が加速される可能性もあります。(脳内でもアセトアルデヒドを分解することが出来るのですが、この分解過程で依存性を発揮する物質が作られるのではないかと研究対象に挙がっているようです。)

  抗酒剤はお酒を飲まないために服用するもので、誤って飲んでしまった場合にはブレーキの役目を期待するものですが、これを嫌うアル症の人は多いようです。

  薬が嫌いな酒飲みは私も含めて非常に多いです。でもお酒も薬の一種なのです。私の場合は、アル症の治療開始時に睡眠薬は断りましたが、半年間抗酒剤は服用し今も手元に置いています。

  たしかに、アルコールを飲まないでいられれば抗酒剤は必要の無いものですが、断酒初期にはお酒を飲まないための保険の役目を果たしてくれます。又、医師の指示を守り抗酒剤の種類を選定すれば、1年ぐらいの服用で副作用が表れることはありません。(私の場合シアナマイドが体質に合わず、服用2週間目ぐらいで湿疹が出た結果ノックビンを服用するように医師の支持があり、その後支障はありませんでした。)

  クリニック通院中には昼食をクリニック周辺の繁華街でとっていましたが、目の前で見知らぬ人がビールを飲まれていて、自分も飲みたいと思ったことがあります。でも、この時抗酒剤を服用していることを思い出し、今の自分はお酒を飲めないのだと諦めることが出来ました。これが、抗酒剤が果たす断酒のための保険の効果だと思います。

  抗酒剤は本人の意思で服用するものですから、他人にはそれを決定する権利はありません。医師の指示でも、服用したふりをすることも出来れば、服用したと誤魔化すテクニックを伝授するアル症の方もいらっしゃいます。でも、お酒を止める努力を開始した時には、家族の理解を得るため、家族を安心させるため、抗酒剤を服用する方が良いと私は思います。

  よく、薬の力を借りなければお酒を止められないのは意志が弱いからとか、自分は薬が嫌いだし薬を飲まなくてもお酒は止められると言う人がいます。しかし私はアルコール依存症と云う病気だから、お酒を飲んでしまう病気だから、抗酒剤を服用しました。

  お酒を止めてほしいと願っているご家族の方にとって、アル症の人間が抗酒剤を服用している姿を見ることは一つの安心材料ではないでしょうか?

  自分の断酒に対する保険になり、ご家族の安心材料を提供することができる。そして、お酒のように強烈な副作用の無い薬、抗酒剤を服用することに抵抗する必要は無いと思いませんか?出来るだけ多くのアル症の仲間にこのハードルを越えていただきたいと私は願っております。


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