あとあじ
山下 るいえ（投稿日：2004/05/16）
卑猥な夢をみた
お相手は夫ではなく
過去の恋人でもなく
会ったことのない青年で
会ったことのない青年は
濃密な４年少々を過ごした恋人よりも
わたしの体のことを良く知っていたけれど
やっぱり会ったことのない青年なので
「オネガイデス、ヤメテクダサイ」と
丁寧な言葉使いのわたしが
目が覚めたら急に恥ずかしくなって
それでも手放せない夢をくるくる回すと
だんだんに青年の顔がぼやけて
そう言えば声は最初からなかったが
そんなことはどうでもいい
逃したくないとつつしみも忘れ
最後にはきれいな指先しか記憶に残らず
その指先もうろ覚えになったとき
「卑猥」がなんだかわからなくなって
何度目かの反芻では
青年の指も卑猥も消えてしまい
フフフと含み笑いの口元で
慣れたトランプ占いをするように
穏やかな秘密を折りたたんだのだった