思い出
鈴音(投稿日:2004/11/15)
夕暮れ時
僕の影は僕の背より長く伸びて
僕には見えないその先のずっと向こうまでのびていた
乗れない自転車をおして僕はうつむいて歩く
途中の公園で顔を洗って、鼻をかみ
嘘を考えなくてはいけない
「おかあさん」
口に出したらまた涙がでたので
ぼくはチクショウと影を踏む
チクショウ
チクショウ
チクショウ
石を打ちつけ帰りそびれたまぬけな蟻を殺す
チクショウ
チクショウ
チクショウ
大丈夫さ
家に帰りさえすれば
晩ご飯と
テレビのアニメと
お風呂と
妹の甘ったるい洋服と
そういうもののごちゃまぜの匂いがぼくに力をくれて
ぼくはきっと嘘が言える
おかあさん、ごめんなさい
転んで、自転車こわれちゃったんだ