魔法の箱
シン(投稿日:2006/06/25)
僕は魔法の箱を持っている。
この箱に入れてボタンを押せば、温かくなるんだ。
でも、何故だが分からないがリアリティーの無い偽物の温かさと言う事は分かってた。
味は悪くない。
何と言うわけでは無い。
僕は、この世界しか知らないのだから。
悲観もしない。
、、、悲観も何もないんだ。
ある朝、突然、閃いた。
その時はそれが全てにおいて、HAPPYに繋がると思ったんだ。
でも、その瞬間から僕の世界は少しずつ、音もなく、消えていった。
儚さの中に見つけてしまった答え。
それでも、素晴らしい未来が待っていると疑わなかったんだ。
僕は魔法の箱を持っている。
その夜、僕は初めて温かい母の腕の中で眠りについた。
僕は最高の世界を手にしたんだ。
その夜、夢の中で優しく僕を見つめる母の姿があった。
次の朝、目覚めた時、僕は泣いていた。
何故、泣いているのかは分からなかった。
その日から、毎晩温かい母の腕に抱かれ眠りについた。
そして、毎晩、同じ夢を見続けたが少しずつ母の姿は薄れていった。
ある朝、突然、数人の大人達が僕と母の眠っている部屋に入ってきて、僕と母を引き離した。
僕は必死に抵抗したけど、無駄だった。
その日から1度も母と会っていない。
けど、同じ夢は見続けていた。
そして毎朝、涙を流しながら目覚めてた。
母の姿は日に日に薄れていった。
そして、ある日、完全に母の姿が消えた。
その瞬間、全ての魔法が解けた。
偽りの中でだけ輝きを放っていた魔法。
夢の中の母の姿と流していた涙の意味。
本当は全て分かっていたんだ。
ただ、偽りの温もりに抱かれて眠る夜を失いたくなかったんだ。
そして、その夜、僕は夢を見なかった。
次の日の朝、僕の世界も完全に消えた。
ほのかな温もりのある体と赤い涙を残して