今は亡き愛しき人よ
貴方を想い嘆く度に
蒼い涙が枯れていく
悲哀の雪は積み重なりて
絶望の雨へと移り行く
果てる事無く流れ落ち
拭い去る事さえ侭ならぬ
それでも尚この悲痛は
きっと何時か乾いてしまおう
春の息吹を手にする前に
この腕に刻み込もう
死色の蝶に想いを込めて
消してはならぬ
切なる誓いを
tattoo
答えを見失った約束が
道端で朽ち果てたように佇んで
絶望の雨に打ち付けられたなら
儚くも息絶えそうに か弱く
拭いても留まらない その涙
拭いても留まり続ける 想い
その細い腕で 身体で
時流を留めるように
刻み込まれた 一羽の蝶のごとく
直に訪れる春の息吹の中
猛々しくも優雅に羽ばたく
蝶にならんことを 今は願う
Butterfly
狂おしき蝶よ愛しの蝶よ
どうして貴方を忘れようか
右腕の傷は度重なれども
いくら刻んでみたとしても
果てれば何も残しはしまい
残り香だけはただ広がりて
触れることすら侭ならぬ
それでも尚生き長らえば
この傷も消え逝くのだろう
今は切に
切に願わん
きたる時を
再会の死を
無題
生き長らえし その先に
残り香のみただ広がりて
そが如何に ─
如何に幸福せなることか
その腕に刻まれし蝶の跡は
約束されむ未来の形なりて
その腕に刻まれし蝶の痛みは
残されむ確かな事実なりて
冷笑するように誘はむ死界は
思うほど夢の漂う世にあらじて
尚 何を奪はんかは知らず
すべてを失いて それでも望まむならば
止めはしない ─ ただ憂いしは ─
何も思はざりつつ再び巡り会ひて
そのまますれ違わむこと
留まり続けむ世界にて
ただそれだけに ならむこと
貴女のその生命のみが
彼の思い留まりうる唯一の理由なりて
その腕に刻まれた蝶の跡は
約束された未来の形なりて
その腕に刻まれた蝶の痛みは
残された確かな事実なり
ちぎれし玉緒は ただ
飛び散りてこの大地の最中に紛れむ
望みて巡り会ひぬは あの世にあらじ
想ひのみはかわらぬものなりて