父親の役割について

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お酒を飲み気付かぬ間に放棄していた父親の役割

  独身の間は外でお酒を飲み、ブラックアウトによる失敗は数え切れない程あります。しかし、結婚してからは、宴会でもない限り家でビールを飲むのが日課でした。そして、よほど飲み過ぎない限り、私は静かなアル症だったと思っています。

  毎日、帰宅時に缶ビールを買って帰り、それを冷蔵庫に入れ順次取り出して飲んでいく。小学校に上がる前の子供達は、競って冷蔵庫からビールを運んでくれました。飲むことによる弊害は、自分の身体に対するダメージだけで、子供に悪影響があるとは思っていませんでした。子供が好きで、コミュニケーションは取れている、だからこそ小さな子がビールを運んでくれる。楽しい家庭だと思い込んでいました。

  しかし、お酒を飲む毎日は、ブラックアウトの連続でした。毎朝、前の日のことを覚えていないのです。そして、お酒の量が多かったのか、機嫌が悪かったのか、子供に理不尽なことをした経験があります。

  よく覚えていないのですが、さして咎める理由も無く子供を叱りつけ、手が出たというのです。翌日、家内から注意されたことは覚えているのですが、オーバに言っていると思っていました。しかし現実は、それでも控えめな表現だったようです。

  先日、子供から「お父さんは僕が小さい時、すごく怒っただろう!」と言われました。子供は、自分が怒られる原因を作ったと判っていることについて、後からそれを口にすることはありません。しかし、何故怒られたか判らない、自分は正しかったと思うことは、思い出し、口にするようです。

  飲んでいた時、下の子は発達が遅れていました。そして、上の子は、心に傷が残っているようです。飲んで記憶が無い、飲んでも一人で飲むだけ、悪いことをしている訳ではない。そう思って飲んでいたことが、知らぬ間に子供にも悪影響を及ぼしていたのです。

  その傷は、家内が薄めてくれていました。しかし、私の断酒と同時期に生じたこと、下の子の目覚しい発達、それは私が父親としての役目を放棄していたことを示しています。家内の努力だけでは、私が及ぼす子供への悪影響を防止出来ていなかったことを示しています。

  結婚して子供が出来、夜泣きをしていても私が抱けばすぐに寝付いてくれる、愛しい子供達でした。子育てには色々な出来事が生じます。上の子は、ヘルニアの疑いがあり子供病院で日帰り手術を経験し、下の子はアトピーが酷く、近くの病院に通いました。しかし、これらの処置は全てが家内まかせ。子供病院での日帰り手術では、会社を休み家族で出向きました。それで役目を果たしたような気になっていました。手術後の子供が父親をさがす叫びを聞いたとき、自分に出来ることは傍についていることだけだと思い、子供の麻酔が覚めるまで傍にいました。しかし、どこか集中力が無く、付き添っている最中もお酒が飲めたらな等と思っていました。
  今思うと、子供とお酒を天秤にかけているようなものです。情けないことです。もう少しアル症が進んでいたら、子供の手術にも付き添わなかったかも知れません。

  下の子はアトピーだけではなく、言葉の発達が遅く、保健所からの勧めで毎週発達相談センターに通っていました。家内からは、その状況についてよく相談がありましたが、私には大きな問題があるようには思えませんでした。子供と話をしても、コミュニケーションもとれるし、少し言葉数が少ない程度に感じていました。その原因が自分にある等とはまったく考えられなかったのです。

  アルコール依存症と診断を受け、3ヶ月の通院治療をしている間に、家族で発達相談センターへ出向くことがありました。センターでの子供の対応を見ると、他の人と満足にコミュニーションをとれないのです。愕然としました。それ以降、自分のアル症の勉強にと書店に出向いた時には、子供用の絵本なども同時に見て廻りました。そうして、休職中は家族との会話の時間が多く、家内に言わせると、今までの結婚生活で一番幸せな時期だったそうです。

  この、休職期間を境にして、子供達の精神状態に大きな変化が現れているように思います。下の子は、休職期間中に目覚しい発達があり、相談センターに通う必要がなくなり、しばらくするとアトピーも治ってしまいました。上の子も集中力がつき、小学校の2年生で大きなゾイドのプラモデルを一人で組み立てるようになっています。

  日頃の生活は、会社から帰るとすでに子供達は寝ています。子供と接する時間は、休日に限定されています。それでも、休日にお酒を飲む時間が無くなったことで、コミュニケーションがとれるようになったのだと思います。お酒を飲んでいる時、人と会話することが煩わしく感じたこと、それが家族にとって大きなストレスを生み出していたのだと思います。

  子供に対して父親が果たすべき役割、どのようなものであるの充分には判っていません。それでも、お酒を飲んでいた時、その役割の大部分を放棄していたことが、子供の成長から判ります。この父親の役割を果たすためにも、断酒を続けていかなければならないと思っています。


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