アルコール依存症・人間関係の障害

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アルコール依存症は、友を家族をなくす病

  アルコール依存症になると、多くの人は友を無くし、家族を無くして行きます。この原因は病気にあるのですが、周囲の人には病気であることが判りません。肺炎や糖尿病であれば、多くの人がその病状について知っています。しかし、アルコール依存症となると、お酒を飲むことが病気だとは思いません。お酒を飲みすぎて肝臓が悪い、お酒を飲みすぎて糖尿になった等、体の障害については理解されるのですが、体に悪いならお酒を飲まなければ良い、「こんな判りきったことを出来ないアイツは意志の弱いやつだ」となります。アルコール依存症の最も恐い症状である、お酒を飲むことが病気であることを理解されないのです。ですから、「お酒を止めるために専門医に治療してもらいなさい。」と言う人はほとんど居ません。又、自分でも病気のことを知らないと、「自分の金でお酒を飲んで何が悪い。」となります。

  しかし、お酒を飲みつづけると体の調子が悪くなります。体の調子が悪いため、会社を休んでしまったり、約束が守れなかったりします。周囲の人からは、「アイツは、また飲みすぎて休んでしまった、また飲みすぎて約束を守れなかった、酒を飲む量ぐらい自分でコントロール出来ないアイツは意志の弱いやつだ、約束を守らないアイツは信用できない。」となります。

  最も信用を無くす約束が、「お酒を飲まない」約束です。お酒を飲んでしまう病気なのですから、これを守ることは困難です。これが困難であると云うことが、周囲の人には理解されないのです。そして、「あれだけ、お酒は飲まないと約束したのに、裏切り者」となる訳です。こうなると、人間関係の崩壊が始まります。誰でも、自分との約束を守らない人のことは嫌いになるものです。まして、普段の姿を見ている家族にとっては、死活問題となる飲酒ですから、お酒を止めさせようとし、お酒を飲まない約束が日々破られていくのです。お酒を飲んでいる姿を見るだけで、悲しくもあり腹立たしい出来事なのです。

  アルコール依存症が病気だと本能的に感じ、病人のために「お酒を隠したり」、「お酒を飲まない約束を取り付けたり」、家族の苦労は大変なものです。そしてアルコール依存症者本人だけではなく、家族も心の病になっていくのです。家庭がギクシャクしだすと、一日中面白くありません。そして、家庭の不和がお酒を飲む理由へと、すりかわっていくのです。

  約束を守れないアルコール依存症者は、孤立していきます。家庭でも、会社でも、そして地域でも。それは、お酒を飲んでいる時の振る舞いに、多くの原因があります。しかし、お酒を飲んでいる時の事を、多くのアルコール依存症者は覚えていないのです。自分が何をしていたのか判らない、家族の抗議は、「何を、大げさに」と思ってしまいます。そして外での失態は、「酒の上の失敗」と大目に見られる場合もあれば、「アイツとは付き合えない」と人が離れていったりします。本人には、何故人が去っていくのか判らない場合も多く、去るものは追わずとなってしまいます。そしてこれが、「世間は俺の実力を判ってくれない。」「誰も、俺のことを判ってくれない」となります。「どうせ判ってもらえないなら、俺は一人で生きていく。」「俺の人生は俺のもの、太く短い人生、気ままに好きな酒を飲みながらはてていく。」となってしまいます。

  お酒に飲まれなかったころの自分の幻影を、本当の自分だと思い、俺の実力はこんなものじゃないと思う。そして、周囲の人からは、「アイツも昔は良いヤツだったのに。」と、過去形で呼ばれるようになってしまうのです。

  親しかった友人が一人二人と離れていき、やがては家族も無くしてしまう、アルコール依存症は、その人の人間関係にも大きな影響を与える恐ろしい病気なのです。



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