音楽マメ知識 調の特性

調色

調にはそれぞれに感じがあります
例えばヘ長調で書かれている曲が
平和でしっとりとしていると感じる・・・
こういう調が持つ特性のことを調色ともいいます
各調が持つ調色を一覧表にして下に著してみました
*この特性はあくまで大体であって、本によっては全く異なる場合もあります

調 調色 曲例
ハ長調 単純、素朴、しかも確然とした感じを出す ベートーヴェン第一交響曲・
シューベルト第九交響曲
嬰ハ長調 ハ長調より典雅で明朗で輝かしい ほとんど用いられない
変ニ長調 魅惑的、深刻、荘重
長調の中で最も暗く痛々しい調の一つで
病的なロマン性も出す
ショパン子犬のワルツ・
ドヴォルザーク「新世界」交響曲
第二楽章(ラルゴ)
ニ長調 高尚で華美、雄大で宗教的
特に歓喜に適する
活発なファンファーレにも用いられる
ヘンデル「ハレルヤ・コーラス」・
ベートーヴェン「田園ソナタ」
嬰ニ長調 ベルリオーズは緩慢な調と呼んでいる あまり使われない
変ホ長調 柔和な中にも悠然さを持ち、
響きが充実し、華麗で荘重最大の変化の
表出に適するといわれる
特に真剣な感情、壮大あるいは英雄的な
気分を表すのによく使われる
青空の調ともいう
ベートーヴェン「英雄交響曲」・
「皇帝協奏曲」
ホ長調 輝かしく、温和で喜ばしい
高貴の調
シューベルト「菩提樹」・
ショパン「別れの曲」
ヘ長調 平和、単純素朴、牧歌的、田園的
低い音を多く使うと痛々しい感情を出し、
緩やかな曲では荘重だがあまり
宗教的ではない感じを出す
ベートーヴェン「田園交響曲」・
シューマン「トロイメライ」
嬰ヘ長調 色彩的 豊かさと柔らか味を持つ
特に、ロマン的な趣を出す
ショパン「夜想曲」Op.15-2・
ブラームス「わが恋は緑」
変ト長調 優和で華美
嬰ヘ長調より深い感情を示すこともある
ブラームス「愛のまこと」・
ショパン「黒鍵」
ト長調 若人の調 誠意、冥想、優美
静かな田園的な風情
春の調ともいう
シューベルト「野ばら」・
ブラームス「セレナード」
嬰ト長調 灰色がかった思想
幾分高尚
ショパン「前奏曲第12番」・
あまり使われない
変イ長調 夢想的で繊細 抒情的で壮麗
生き生きとして新鮮
メンデルスゾーン「歌の翼に」・
シューマン「献呈」
イ長調 輝かしく確信と希望に満ちる
単純、純粋、快活
誠実な感情に適する
ベートーヴェン「第七交響曲」・
モーツァルト
「クラリネット五重奏曲」
変ロ長調 ゆったりした感じを出す
柔和な輝かしさ、静かで
冥想的な所もある
ベートーヴェン「第四交響曲」・
シューベルト「アヴェ・マリア」
ロ長調 積極的になると、大胆な誇りを表し
消極的になると清潔な純粋さを出す
精力的なこともある
ベートーヴェン
「ピアノ協奏曲・皇帝第2楽章」・
ショパン「前奏曲第11番」
ハ短調 柔和の中に、真剣な情熱を持つ
悲劇的な力、超自然的な感情
激烈な感情
ベートーヴェン
「第五交響曲・悲愴ソナタ」・
ブラームス「第一交響曲」
嬰ハ短調 最も陰暗な調の一つ
残忍、皮肉、悲愴、不気味
ベートーヴェン「月光ソナタ」・
ショパン「悲しげなワルツ
Op.64-2」
ニ短調 不安、悲歓、荘厳、崇高
シューマンによると、巨大な力を持つ調
バッハ「トッカータとフーガ」・
ベートーヴェン「第九交響曲」
嬰ニ短調 ベルリオーズは緩慢な調と呼んでいる ほとんど使われない
変ホ短調 最も陰暗、陰気な調の一つ
シューマンによると、
神秘的な恐怖に満ちた調
ショパン「練習曲Op.10-6」・
「前奏曲Op.28-14」
ホ短調 悲歓、悲痛、不安
早い曲では激烈なものとなる
ブラームス「第四交響曲」・
チャイコフスキー「第五交響曲」
ヘ短調 悲惨な調 憂鬱、暗い情熱 ベートーヴェン「熱情ソナタ」・
ショパン「寂しい練習曲」
嬰ヘ短調 暗く神秘的、妖怪的、同じに情熱的 シューベルト「凍れる涙」・
シューマン「美しき五月に」
ト短調 悲しみ、夢のような憂愁の加わった
静かな優しさ、真剣な努力などを表す
時にはロマン的な高揚を感じさせる
感傷味うぃ、特に効果的に伝える暗い調
シューベルト「魔王」・
バッハ「オルガン用の小フーガ」
嬰ト短調 非常に陰暗で、音響効果に乏しい ショパン「前奏曲第12番」・
「練習曲Op.25-6」
変イ短調 悲愴で心を裂くような効果を起こす ベートーヴェン「葬送ソナタ・第3楽章
葬送行進曲」
ほとんど用いられない
イ短調 単純素朴な柔らかい悲しみ
最も女性的 敬神的な諦めに
似た感情も出す
ショパン「ワルツ・Op.34-2」・
ベートーヴェン「エリーゼの為に」
変ロ短調 変イ短調と共に葬送行進曲向き
陰暗で憂鬱で悲劇的
ショパン「夜想曲・Op.9-1」・
「葬送行進曲Op.35
変ロ短調ソナタ・第3楽章」
ロ短調 非常に暗く憂愁であるが
静かな期待と辛抱強い希望もほのめかす
チャイコフスキー「悲愴交響曲」・
ブラームス「永遠の愛について」



*参考文献 新版 「音楽の理論」 門馬直美-箸 音楽之友社*