|
アミクトゥス(amictus)
長方形の白い麻でできた布で、ミサの時に司祭が肩をおおうために、祭服の一番下に着ますが、現在ラテン典礼において着用は「随意」となっています。アミクトゥスを肩に着けるとき、司祭は次の祈りを唱えます。「主よ、私が敵の襲撃に立ち向かうことができるために、
私の頭に救いの兜をかぶらせてください。」
アミクトゥスの原語は、ラテン語の“amictus”「衣服、外とう」です。動詞の“amicire”「着衣する」と言う言葉に由来します。アミクトゥスの起源については、古代エジプトの隠修士たちの服の一部であるとか、古代の一般の人たちが防寒用のショールとして使っていたものであるとか、祭服を汗などから防ぐため使われたと言われ、はっきりしていません。
最も古い典礼儀式書の中にも、アミクトゥスは祭壇に仕える、犠牲をささげる者の使用する衣服の一部であると記されています。
11世紀ごろのフランスベネディクト会の修道士たちの間では、アミクトゥスをまず頭上にあてて後ろに垂らして祭服と首のまわりの装飾としていました。そのため、刺繍(ししゅう)などがほどこされ美しいものとなりました。
|
|
アルバ(alba)
アルバは、祭服の中で最も基本的なもので、全ての奉仕者に共通した祭服です。白い布地で作られた長い下着です。古代ギリシアやヨーロッパにおいて、アルバは足首まである長いトゥニカ(tunica下着)で、男女を問わず着用していました。しかし、短い下着の方が実用的であったため、次第に短いものになり、4世紀ごろに教会の典礼儀式においてのみ使用されるようになっていきました。中世には、絹や金、銀などの刺繍(ししゅう)が施されていましたが、16世紀ごろにはレースを用いるようになりました。アルバは、キリストの十字架の死によって取り戻された純白な清らかな心を象徴していますので、装飾も単純で少なめの方がよいとされています。布地は麻が望ましいです。
|
|
ストラ
右の肩にかけていたクラビクルム(claviculum)はローマ皇帝の権威の印でしたが ストラ(stola)と言う名では、司祭の両肩にかけて キリストの「くびき」のシンボルとなりました。叙階された者の権威を表すもので、細長い帯状のものです。4世紀頃ころから、祭服の一部として使われは始めました。ストラは司祭の尊敬と力のしるしであり、キリストの絆と、その王国のための誠実に勤めるキリスト者の義務と、不滅の希望のシンボルです。また、ストラの下の部分に 時についている「ふさ」は司祭職とつながっている信徒の共同体を表します。感謝の祭儀を挙式する際に司教、司祭、アルバの上から首の周りにストラをかけ、助祭はこれを左肩からたすき状にかけます。ストラの長さは、2m30cmから2m60cm 、幅は12cmから25cmで、ストラの色は4色あり、典礼暦によって変わります。
|
|
チングルム ひも
チングルムは白麻で作られた縄で(羊毛もしくは絹の場合もある)で、アルバとストラの上から腰に締めるひもです。長さはストラと同じです。受難の時、キリストを柱に縛り付けた縄を暗示します。シンボルとしては、貞節、節制、自律を意味します。
|
|
スータン(soutane)
スータンとは、カトリック教会の司祭や神父が平常着る足下くらいまで長い服のこと。キャソックともいう。イタリア語の上着 cassacaとシギを意味するsottanaに由来します。聖職者の平服を指すもので、キリストと教会への献身を示すものであります。伝統的に33個のボタンを付けていますが。 これは即ち、キリストが地上において人間として過ごした年数であります。 スータンの色は 次のように決められています。 司祭は黒く,司教は赤紫 枢機卿は赤、教皇は白です。
スルプリ(surplice)
スルプリ〈ラテン語superpelliceum)は袖幅の広い白い、小さなチュニックであり、スータンの上に起用されています。多くの場合、秘跡の授与その他のいくつかの典礼の際に用いられます。とくに、説教者、聴罪司祭、神学生と侍者はスプリを着ています。昔のスプリは綺麗な手編レースで作っていました。更にスルプリは、正義と史実の神聖さにおいて、新たに生まれかわったひとのしんぼるです。
ダルマチカ (dalamatica)
ダルマチカは助祭固有の祭服で、アルバとストラのうえに着用する袖幅がひろく、着丈の短いチュニックです。司教のミサ祭儀のときに助祭が着用します。十字架の形を表すダルマチカは勿論きりすとの受難を思い起こし、また観喜、救い。正義のシンボルです。
|
|
|
カズラ(casula)
ラテン語で「小さな家」を意味するCasulaが語源であり、典礼の司式者が正装する際、最後に見に付けて、他の衣服を覆うものです。色は教会歴もしくは挙行される典礼の種数によって、白、赤、ピンク、緑、紫、黒、すみれ色、金、銀などが用いられます。カズラは 他の衣服を覆うから キリストの愛は 他の全てに超引越する美徳であることを表します。そのために カズラの背面には キリストの受難を暗示する十字架が刺繍されているのです。このカスラは 特に、司祭が実現するべき キリストの愛の完全と霊的な働きのシンボルです。
|
|
聖職者の剃髪 (トンスラ)
カトリックでは、聖職者になる時、頭の上部を剃る儀式をします。頭の上部の脳天のところを剃って、額の生え際とか、耳の上とか、後頭部とかの髪は残します。その結果,残った髪が、脳天が剃られた状態で、頭を囲むような形で輪を描きます。これをトンスラ(ラテン語でtonsura)と言います。これは、最初に僧となる時に剃るもので、この儀式のことも、トンスラと言います。
中世では、最初の儀式の時に剃って、その後もずっと剃り続けたようですが、近世以降になると、普段は、髪を生やしているケースもあります。フランシスコ・ザビエルは、イエズス会の修道士ですから、当然、ずっと剃髪し続けていたはずです。ただ、男性の頭は、歳と共にはげてくる人がいるので、そういう人は、別に頭を剃らなくとも、自然にトンスラの状態になります。
トンスラは三つのシンボルを意味します。第一に聖職者が守るべき誓願、即ち(貞潔、従順と清貧)、第二にキリストの茨の冠、あるいは栄光の後光、第三に聖職者が目指している完全な生き方と おこってくる欲望に対しての霊的な勝利を示します。 トンスラの儀式は1972年に廃止されました。
|
|
パリウム
パリウム (Pallium)は一方の肩から首にまわしてもう一方の肩に着ける羊毛製の白い帯です。この羊毛はローマの聖アグネス聖堂において祝福された2頭の羊のもので、前面と背面に一つずつ、6つの黒い十字架で飾られた2つの短い垂れ緒が就いています。ローマ教皇権のシンボルであり、祝福されて、聖ピエトロ大聖堂のペトロの墓所の上に捧げられた後、教皇から大司教へ教皇権分与の証として授けられます。着用すると 「Y」字型となるが、古来「Y」は十字架のヴァリアント(変形)として用いられてきました。 そのためキリストの受難のシンボルともされます。
|
|
ティアラ(三重冠)
ティアラは(ラテン語tiara,またtriregnum)3つの円形の黄金あるいは 銀の王冠を積み重ねた形のもので、頂上に十字架が付けられ、教皇のみが用いました。ティアラの背部に教皇の肩に垂らす2つの帯があって、これはキリストの「くびき」を現します。旧い由来をもっているが、現代の形の最古の例は1315年のものです。1964年11月13日に教皇パウロ6世が貧しい人々の為にティアラを売りました。そのときから教皇はティアラをかぶりませんが、ヴァチカンの文書の中ではペトロの鍵と合わせた姿で記されています。教皇の3つの王冠については多様な解釈があり、例えば、三位一体のシンボルはそうです。また神の国の3つの段階を示して、まず、既に天にある「栄光の教会」、次に、煉獄での清めの試練の中の「苦しんでいる教会」、そしてこの世にキリストを証する「戦う教会」です。おそらく最も正しい説明は次の事でしょう。ティアラが教皇の3つの霊的な権能を表します。彼が、キリストの代理者であると同時にペトロの後継者であり、また 天と地に対する神の権能を持ち(ペトロに与えられた鍵)、キリストの名によって間違いのない教えを伝える恵みを持つと言うことです。
|
|
ミトラ(mitra)
ミトラはエジプト語で、教皇、枢機卿、司教の権威の印です。現代のミトラは天辺に十字状の裂け目の入った頭飾りで、その形は 尖頭アーチに似ています。ミトラは、宝石の象眼や銀糸刺繍が施されたものや、無装飾りのものがあり、麻か絹で作られています。ミトラは、ユダヤ教の大祭司が 権威のシンボルとしてかぶっていた尖頭帽を連想させますが、直接これに由来していません。ミトラの2つの角部は モーゼが神からいただいた、2枚の石の板でかかれた十戒を示すと同時に、旧約と新約の聖書も現します。ミトラの背部の着用者の肩に垂らす2つの帯はキリストの「くびき」を現します。
|
|
教皇、枢機卿、司教、修道者の指輪
指輪は高位聖職者が指にはめ、キリストの花嫁である教会と、あるいはキリストとの霊的な結婚、そして指輪をはめる人の聖なる務めのシンボルです。教皇の指輪は「漁師の指輪」と呼ばれ、純金で、人々の漁をする使徒ペトロの姿が彫り込まれています。新しい教皇が選出されると、その名前が彫られて指にはめられ、教皇が亡くなられた時に、砕いて壊されます。また教皇はカメオの指輪も常に着用していますが、彫刻を施された宝石を身に着けるのは教皇だけに許された特権です。
枢機卿の指輪はサファイア製で、選ばれた時の教皇から授けられ、内側には、教皇の紋章が彫り込まれています。司教の指輪は、やはり宝石がついていますが、これは枢機卿のみつけることが許されるサファイア以外の宝石からはめる本人が選ぶことができます。これは「司教指輪-annulus pastoralis」と呼ばれ、典礼の時にも用いられます。この典礼の時の指輪は美しく大きな宝石が付けられ、又手袋を付けたままでも、楽にはめられるよう、大き目に作られています。
大修道院長および女子大修道院長も、大変質素な宝石のついた指輪を付けます。十字架をかたどるか、全く無装飾の金属の指輪は、修道女がつけるもので、キリストとの結婚のシンボルになります。これら全ての種類の指輪は 結局、神との永遠の契約を示し、公然と授けられた聖なる使命と同時に 神と諸聖人や教会の皆さんの前で 自分が宣言した誓願のシンボルです。
|
|
司教杖
使徒たちの時代に羊飼いの杖は歩行用として一般にも用いられていました。その後、スティック(クロス)とも呼ばれているこの杖は、司教たちや大修道院長、女子修道院長の司教杖になりました。だが、彼らの杖は素朴な木製で創られています。スティックはもともとギリシア語のタウ(T)の形をしていましたが、12世紀からその上端は湾曲した形になり、現在では最も広範囲に広がっています。
スティックは3つの特徴を持っています。弱い人を支え、強めるためにスティックは固いです。迷った人に追いつく、引き戻すためにスティックは曲げられています。躊躇する人を決意させるためにスティックの端はとがった形をしています。
スティックは、「ソケット」 、 「結び目 」、 「十字架」と呼ばれている3つの部分をもち、十字架の部分は芸術的に綺麗に装飾されています。
様々な式の時に司教はスティックの曲がった部分を人に向けます。
|
|
バレッタ(典礼)
中世のラテン・ ビレタムから借りられたイタリアの ベレッタ自体のバレッタは、厚手の布地、厚紙または革で裏打ちされた正方形の服飾品で、以前は聖職者が着用していなかったマイターの使用、時には教会の外での通常の頭飾りとして。
バレッタの上には3本または4本の角があります。本の角があります。 聖職者は スータンと同じ色 のバレッタを
のバレッタを のバレッタをかぶります 。すなわち司祭 は黒、 司教 は紫、枢機卿
は赤です。
|
|
神の承認と恩寵のシンボル アーモンド
イスラエルの12部族の指導者達が神の幕屋の前に置いた枝のうち、大祭司アロンの枝に芽が吹き、ついでアーモンドの実を結びました。(民数紀17,1−11,16−23)このことからアーモンドは神の承認、摂理、また恩寵を現します。また、受粉せずに実を結ぶとされたことから 聖母マリアの純潔を象徴します。更に、美術によれば キリストとマリアの体を包むマンドルラ(mandorla)つまり光背はアーモンド型で、神の承認と恩寵を具体的に現そうとします。
|
|
天国のシンボル さくらんぼ (桜桃)
さくらんぼの赤く甘い実は しばしば天国の果実と呼ばれています。幼いイエスの手にあるさくらんぼは、祝福を受けた人、即ち天国の幸せに召された緒聖人の喜びを現します。又さくらんぼは、善行によって高められた人格の美さを象徴します。中世の時代の人々は 桜の木が 豊富な実を結ぶ事から 天国の木だと思い込んで、桜の木を「永遠の命の木」と名付けました。更に、中世の伝説によれば、マリアとヨゼフが人口登録のために ベツレヘムを訪れた冬中に ある桜の木がその花が咲き、実をつけて、彼らの飢えをいやしたそうです。15世紀の宗教劇の1幕として この場面が登場します。
|
|
マリアの悲しみと王権のシンボル アイリス
アイリスは、特に紫色のものは 高貴な花として 王侯貴族にたとえられて、ゆりの花に次いで聖母の花です。キリスト教のシンボルとして 初期フランドル派の画匠の作品に現れ、聖母像の中でゆりと一緒、あるいはゆりの代わりとなります。このシンボル的意義は、アイリスという名前が『剣ゆり』を意味することから、キリストの受難における聖母の悲しみを暗示すると受け取られています。アイリスは「あなた自身も剣で心を刺し貫かれる」(ルカ2,35)と言うシメオンの預言を思い起こさせます。スペインの芸術家は アイリスを 「天の元后」であるマリア、又「無原罪」の聖母のシンボルとしてよく使っていました。
|
|
試練の真只中に忍耐する正しい人のシンボル サンショウウオ
古代の人々はサンショウウオが火の中に置かれていても絶対死なず、かえってその火を完全に食い尽くすと固く思い込んでいました。また 古代エジプト人は この動物がとても冷たいから 火を消す力を持っていると信じて、神殿の壁に見受けられる「サンショウウオ」のヒエログリフは「冷死した人」を意味しています。フランスの王フランスワ1世は 自分の家の紋章として サンショウウオを選んだ上で、次のモットーを決めました。「私は火を食べて生き、必ず火を消す」と。彼はこの意志を、城のあらゆる壁、天井 特に、各部屋の大きな煙突のマントルピースに飾りました。このサンショウウオは王様の冠の下に描かれています。中世の錬金術師たちは サンショウウオを「火と不燃性の(つまり燃えない)硫黄」のシンボルとしました。従って、キリスト教の伝統は サンショウオを「試練や迫害の真只中に、平和を保ち、神への信頼を絶対失わない正しい人」のシンボルと「永遠の命」のシンボルと決めました。さらに、サンショウウオがいつも隠れているので 貞潔、羞恥心を示し、聖母マリアの童貞を表現するものとなりました。
|