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「 1mg. 」
            発行 2004.03.21

A5/フルカラー/P20/30g/\200

福沢姉弟・小説。
幼い祐麒視点の話と、現在の祐巳視点から見た祐麒の、二編収録。
目指したのは微・チラリズムラブ。天然姉に思春期の少年は大変です。(という話だと思われ…)

完売いたしました。ありがとうございます!尚、再販の予定はありません。(コピー大変でして…)






1 m g .



思えばあまり喧嘩のしない姉弟だった。



「何言ってるんだよ、そうに決まってるだろ!」
「……でも」
 不満顔のクラスメイトたちを申し訳なさそうに祐麒は見つめる。
 だって、どちらかといえば祐麒はそうとは思わない方なのだから。嘘をつくのはとても難しい。挙げられた回答を一つ一つ思い出す。
 ――姉はずるい?
(……むしろ要領が悪いと思うな)
 今朝も片方のリボンをつけ間違えたとかで、出かける数分前になって慌てて結び直していた。……結局、見かねた自分が最後には手伝い、直してあげた。
 ――姉は怖い?
(……どっちかって言うと、可笑しいほうだし)
 嬉しそうに自分の服を兼用で着ようとする様子は、怖いというよりも、もういっそ微笑ましい域にある。なにも好んで男の子ものを着なくても可愛い服はたくさん持っているだろうに。借りてゆく際の、「祐麒も私の、好きなの着ていいからね」というのは笑えない冗談だと思いたい。
 そして最後。
 ――姉は暴力的?
(………………ありえない)






(……やっぱり男の子ってずるい)
 逞しくはまだそうないけれど、祐麒の身長はまだこれからもどんどん伸びるだろうし、力ももっとついてくるようになる。差は開くばかりだ。
 男の子と女の子。
 たったそれだけの境界線のせいで。
「…………」
「祐巳? なに変な顔し――いてっ……て、て、ちょっ……祐巳!?」
 えい、と無言で無防備な祐麒の頬を両手でもって左右に引っ張る。だがすぐにふりほどかれてしまった。それがまたなんだか非常に悔しい。






「重さってさ、たまにわかんなくなるよ」






毎日、毎日。

たとえどんな瞬間、どんな日々があろうと。



たぶんそれは変わらないふたりの……―――



(「 1mg. 」一部抜粋)