ガルグル!での妄想
戌井VS金島
(ふたりが対決したらこんな感じかなーみたいなショート話)



--------------「 深淵に臨む伝説 」


まるで可愛がっていた犬の突然の凶行に驚きつつも、抜け落ちてはいなかった牙の存在に狂喜するように。



「やれやれ。あなたはもう少し、同じ犬は犬でも狡賢く聞き分けのいい犬だと思っていましたが……やはり犬は犬、結局この程度ですか。せっかく私みずからわざわざ忠告してさしあげたというのに」
「あれ? てっきり俺は来いって言ってるんだとばっかり思ってたんだけどな」
朗らかなようでいてにやりと嘯くようにして笑う男に、対する男の笑みもまた濃く深く歪む。
細められた瞳は笑っていながら笑ってなどいない。鋭く尖り、刺し貫くように更に歪んだ笑顔で、嬉しそうに愉しそうにその微笑を浮かべながらも、結局のところ男はいくらも笑ってなどいないのだ。愉悦の刻まれる唇の端がするりと開き、
「それはあなたが勝手にそう思っただけですよ」
「ふうん……ま、いいや。それならそれで。結局オレもどっちでもいいっつうか、どうでもいいっつうか。――ああ、いや、待て。忘れてた。これ言うの忘れてたよ俺。あ、あ、あー、いやあんまり時間は取らせねーからさ、ちょっとだけいま言ってい?」
金島さんよと旧知の仲のように男を呼ぶ。実際は交流らしい交流など片手で有り余るくらいであり、しかもその内容に到っては笑って話せるようなものでもなく――初めて会ったときとはまた顔の違うその男の名を、さらりと舌に乗せ、整形って便利だね、と心の中で呟きながら、
「あんた、言ったよな」
「何をかな」
「一際輝く伝説は、伝説に終止符を打つ奴だってさ」
「ああ、言いましたね。確かに言いましたよ、だからこそ、私がここにこうしているんですから。あの男を殺す、その為だけにね。――そして伝説は今日で終わる。……そう……この、俺が……俺が終わらせるんだよ! あいつを殺して、息の根を止めて踏みにじって壊して壊して――そしてこの俺が新しい伝説になるんだ。あいつの居場所を最後の最後まで奪ってな! ああ、いいじゃねえか、最高だよ、ハハハハハハハ!! ヒャハハハハハハ!!!」
「――ああ、だからさ、それ違うよ」
「ハ……?」
笑い声を両断する静謐な声に、金島はぴたりとその狂った表情を止めた。最高潮までたちのぼっていた気分を害された一言に、化けの皮が剥がれた荒々しい顔つきで相手の頭から爪先までを舐めるように観察する。
「……何が、違うって?」
「伝説さ」
そう言って犬は笑った。
「一際輝く伝説――それは誰にも破られないものだからこそ、誰よりも何よりも何処よりも一際輝くものになる。それが」
牙を忘れぬ、一匹の犬が
その瞬間。
悠然と、これこそが、最後の切り札であるかのように。


「最強にして、最高の、伝説だ」


牙を剥いて、目前の敵へと吼えた。









電撃文庫「橋」シリーズ(著・成田良悟)、ミュウミュウ読了後の一発書き。
がるぐるで戌井VS金島な場面があったらいいなーあるとよいなああ、
と思いながらの創作でした。短い。……これだけ読んで言えることは
まあ雰囲気を似せようと奮闘してるのがよくわかることだと思われます。(痛)

ちなみに成田作品ではバウワウが一番好きで次点はバッカーノ!
(戌井・シズ・クレア・エルマー・正臣…特に好きな男性陣はこんな感じ)


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