Out of standard #02
斬新な接客

私、映画好きであります。
映画館にも足を運びますが、レンタルビデオ屋へ行く機会も多いのですが
私の住まいの近くには大手レンタル屋がなく、小さなビデオ屋が2つだけ。
聞いたことのない名前の小さいビデオ屋と、エロビデオ専門の無人レンタル屋。

エロも気にはなりますが、メインはやっぱり普通の映画が借りられるレンタル店。
今ではすっかり常連と化した店ですが、以前ここには別の店があったんです。

「その店」が出来たのは、私が一人暮らしを始めて1年ほど経った頃。
それまで、電車を使ってビデオを借りていた僕にとっては嬉しいニュース…のはずでした。


開店を知らせるチラシをチェックしつつ、開店ホヤホヤの店内へ。

 DS  「(少し小さいけど、これからは電車代も時間も気にせずにビデオが観られる♪)」

 店長 「…おっ、よう来たな!なんか借りていけや。」

 DS  「はっ?!」

 店長 「はっ?! じゃねーよ。」

 DS  「(なんや?!この店…なんで客にタメ口やねん。)」
  カルチャーショックを受けつつも、会員手続きを終え、新作ビデオを2本借りてカウンターへ行く私。

 店長 「いきなり新作かよ。芸がねーな。」
  ビデオ選びに芸風が関係ある、と初めて知る私。

 店長 「これ、面白かったら教えろよ。『店長のおすすめ』ってシール貼るから。ガハハ…」
  少しづつ、このオッサンが面白くなってきた私。

 店長 「開店サービスで、特別に2週間貸してやるよ。」
  騙されるもんか、と警戒する私。

 店長 「レンタル代も2週間分貰うけどなっ!ガハハ…」
  やはりそう来たか、と内心ほくそえむ私。

 店長 「じゃぁ、2本が2泊3日で…840万円。」
  あぁ、なつかしいギャグだ…と目を細める私。

 店長 「おうおう、千円じゃ足りねーけど…まぁ、今回は大目に見るか。ほれ、おつり。」

結局その後、店長を見かける事はなく、客にガン飛ばすアルバイトに変わった数ヵ月後に閉店してしまった。
そして現在の、当り障りの無い普通のレンタルビデオ屋が出来たわけだが…
 最初はカルチャーショックに呆然、そして少し頭にきた変なビデオ屋だったけど…
今考えると、あの江戸っ子な店長経営のレンタルビデオ屋が妙に恋しくなったりする。


かと言って、
 「また同じように客にタメ口きくレンタルビデオ屋が出来たら通う?」
と聞かれれば、満面の笑顔で
 「誰が通うかよ。」
って吐き捨てますが。