Out of standard #06
海が見たい、と彼女は言った

アレは私が浪人2年目の冬の事でした。
私の幼なじみで、初恋の相手でもあるO嬢がスキーをしに新潟へ遊びに来ていた時。
1泊2日日程の2日目、彼女が大阪へ帰る日。
私の住んでる上越市はスキー場へ30分でいける環境なんですが、
さすがにスキーを楽しんでるほどの時間は無く、数時間ほどの電車の時間を持て余していた所、

O嬢 「ねぇ。」

 DS 「ん?」

O嬢 「海が見たい。」

 DS 「海?」

O嬢 「うん。 海。 日本海って、見たことないねん。」

 DS 「冬の日本海って、寂しいよー。」

O嬢 「それがいいねん。」

別れ際に冬の日本海を見に行く。
正直、何か感情的になってしまいそうで気は進まなかったんですが
初恋の人との日本海もいい思い出になるか、と思って出かけました。

O嬢 「うわぁ、凄ーい! 東宝映画のオープニングみたい!」

白波荒れ狂う日本海を初めて見た感想にしては、なかなか奇抜な形容だな、と思う私。

O嬢 「ねぇ、もっと近くに行こうよ。」

防波堤のギリギリに立つ二人。

 DS 「あんまり近づくと危ないぞ。 下がコケで滑るから。」

O嬢 「大丈夫、大丈夫。」

しばらく冬の日本海の雄大さに見とれていた私。
Oとの馴れ初めやら、今までの楽しかった思い出、辛かった思い出が走馬燈のように…

そんな私に気付かれないように、そーっと背後にまわるO嬢。

O嬢 「わっ!!」

私を驚かせようとして肩をガッ、と掴むO嬢。
コケで滑って、驚く前に海へ落ちるDS。

 DS 「ひぃぃ!!」

荒波逆巻く冬の日本海にのまれるDS。
泳いでも泳いでも防波堤にたどり着けず、
たどり着くというより「うちあげられる」形で岸壁にしがみついて九死に一生を得た。

結局、最後まで殺意を全面否定したO嬢。
逆に、
 「脅かそうとして後ろから肩を掴んだら、急に目の前から消えた!」
と言って興奮する始末。

私のこれまでの人生が走馬燈のように脳裏をよぎるところでした。

走馬燈がよく回った、DS19歳 冬の日本海のお話。