Out of standard #10
高橋尚子に捧ぐ

ウチのクラブの後輩に、
体長を崩して辞めてしまいましたがAという女の子の後輩がいました。
彼女は凄かったです。勘違い女王です。
数年前にクラブでのスキー合宿の帰り。
私たちの大阪―長野間の移動手段は、もちろん安上がりな夜行バス。
それぞれ、クラブで予約してあった席に座ろうと車内に乗り込んだ時。

  A. 「D、DSさん!隣に座ってよろしいですか!」

 DS 「あぁ、ええよ。」

  A. 「D、DSさん!…奥へどうぞ!」

先輩の私に奥の席(上座?)を勧めてくれるあたり、
なかなかの心配りだなぁ…なんて思ってたんですが。
奥の席(つまり窓側)

メッチャ寒〜〜〜い。

すきま風ビュービュー吹き込んで、夜行バスなのに眠れる自信なし。
かといって、先輩に配慮してくれたAの気持ちが有り難い分、

 「寒いから席替わって。」

とは言えず。

数時間経ってもすきま風の寒さは変わらず、周りの人達も寝静まった夜の12時過ぎ。
私は違う意味で眠くなってきてた。


  A 「…DSさん? まだ起きてはるんですか?」

 DS 「ん? あぁ、ちょっと、ね。」

  A 「…ちょっとお話してもよろしいですか?」

 DS 「お前も寝られへんの? うん、ええよ。何の話?

    あ、周りの人は寝てるから小さい声でな。」

  A 「ハイ。 …DSさん、知ってました?」

 DS 「何を?」

  A 「マラソンです。」

 DS 「マラソンは知ってるよ。」

  A 「マラソンって…421.95キロ走るんですって。」

 DS 
「どんだけ走んねん。」

つっこんだ瞬間、寝てたはずの他の乗客から巻き起こる失笑の嵐。

  A 「違うんですか?」

 DS 「…違うよ。42.195キロや。421.95キロって…語呂が悪いだろ。」

  A 「語呂ですか。」

 DS 「いや、語呂だけの問題ちゃうけどさ。 走りすぎやん。

    大阪―東京間を走る気かいな。」

  A 「東京ですか。」

 DS 「お前…例えば日本を縦断するとどれくらい走ると思ってる?」
     (注:約3000キロ)

  A 「うーん…10万キロは走りますよね?」

 DS 「どんだけ走んねん!」

失笑から、ついに爆笑へ変わる室内。
おかげで寒かった窓際座席の事を忘れて帰ることが出来た。
有難う、A。