Out of standard #11
「コックリさん狂想曲」
<attension! 不気味な話が含まれています。その手の話が苦手な方はご遠慮下さい。>
ちょっと不気味なお話。
高校時代、修学旅行で行った所が、石川県にあります「東尋坊」。
断崖絶壁で、眼下には荒波の日本海が広がっておりましてね。
そうです、いわゆる自殺の名所です。
先生方にしてみれば、命の尊さを学べと言うことですか。
にしては随分生々しい場所を選んだものですね。
一年先輩の方々が去年、「鈴鹿サーキット」へ修学旅行に行ったのと比べると
この扱いの差は何。
そこで泊まった旅館がまた、えらく雰囲気満点でね。
いかにも、
「開かずの間、ございます。」
「夜な夜な聞こえるすすり泣き、ございます。」
「風も無いのに消えるろうそく、ございます。」
っていう感じの、古い(しかも不気味な古さ)旅館だったんですよ。
大体考えてもみて下さいよ。
売り文句の、
『東尋坊の絶景が一望できる旅館』ってのは、
『東尋坊までアクセス短時間』
ってことだし、それはつまり
『自殺志願者御用達』
っていう方程式が成立しないか。
過去に絶対、
「ガケに飛び込むの…怖い…この部屋でなら…怖くない…」
っていう人がいてそうやないですか。
そんな旅館に泊まらされました。私達。
T 「コックリさんしよーぜー!」
消灯時間前、突如持ち上がった暇つぶしがコックリさん。
DS 「お前、よくこんな気味悪い旅館でコックリさん出来るなぁ。」
T 「何言うてん。気味が悪いから気分出るんやんけ。」
今回はパスした私でしたが、元々男子用に割り当てられた部屋が大部屋2つ。
もう一つの部屋は地味にトランプで盛り上がってたので、ギャラリーとして見守る事にした。
そして、電灯は付けたまま始まるコックリさん。
「動かね―じゃん。」「あ、動いた!」「今、お前が動かしたろー?」等々、
いたって平和に、そしてダラダラと時間が過ぎたある時。
…後で知ったんですが、その時は旅館に僕らしか泊まってなかったんで、
先生達が旅館の人に「11時になったら電灯を消す」ように頼んでたそうです。
そんな事、事前に知らされてなかったもんですから…
「うわー!なんや!?」
「停電か?!」
「コックリさんの仕業ちゃうか?」
「う、う、うわぁぁーーー!!! あそこ!ふすまの所ぉぉぉーーー!!!」
強制消灯とは知らなかった僕らですが、突然暗くなって騒然とする中で響く叫び声。
月明かりで多少は部屋の様子が分かったので、「ふすま」の方を振り向いたら…
そこには『タバコの煙』のような塊がモヤモヤと…
違う…
顔だ。
人の顔…
そう意識した瞬間、電灯が付いて、部屋に飛び込んでくる先生や他の部屋の生徒達。
「どうした?」 「なんかあったのー?」
もう「ふすま」の所には何も見えない。もちろん、誰もタバコなんか吸ってない…。
あの、空中に漂ってた「顔」…
目を閉じてうつむき加減だった顔は…
この世に既にいない人の顔だったんでしょうか。 見間違いだったのでしょうか。