Out of standard #16
孤独死しそう…

私が大学生のころ、一人暮らしをしていた時の話。
大学では夏休みが2ヶ月以上あるもんでして、その夏もやっぱり実家へ長期帰省。
久し振りに遊ぶ実家の友人連中とバカ騒ぎな毎日で
頭のネジが外れるくらい遊び倒した後、意気揚揚と大阪へ帰宅。
人ごみに溢れる大阪駅を見つめつつ、
 「あぁ、帰って来たのね、コンクリートジャングルへ。」
と、しばし感慨にふけってみる。
なんじゃかんじゃで自宅へ着いたのは夜の11時過ぎ。

 DS 「あぁ、足が痛い…風呂入りたいけど、2ヶ月ほったらかしだから
    とりあえず風呂を掃除せんと入られへんよなぁ…面倒くさいなぁ。」

などとボヤきつつ、帰宅早々、ポストにつっこまれてる大量のビラや手紙の類をみて
ちょっぴり憂鬱になる自分。特にあきれるのが、ピンクチラシの量。

 「何なんだ、この大量のいかがわしいちらしは?!」

 「何なんだ、この扇情的な文句は?!」

 「誰なんだ、この写ってるきれいな女性は?!」

夜も遅くに、玄関の前で大量のピンクチラシに目を通しながら唸る金髪の男。
俺が警官なら絶対職務質問する。

意外なものに足止めを食らった僕は、我にかえって玄関に鍵を差し込む。

 DS 「…ただいまー。」

誰もいないのに呟くセリフ。
勿論、室内は真っ暗。
真夏に2ヶ月間閉めっぱなしだったので、室内からよどんだ空気が流れてくる。

ドアを閉めて鍵をかける。
室内は、窓から漏れてくる月光しかなく、薄暗くて物音一つ無い…。

玄関横の電灯のスイッチを、手探りで見つけてスイッチを入れる…


…スイッチを入れる…


 DS 「アレ?」

スイッチを入れたのに電灯がつかない。

 DS 「何だ、電灯の寿命かよ。普段使わない電灯なのに。」

靴を脱いで部屋に上がる。
居間の電灯のヒモを引っ張る…


…ヒモを引っ張る…

 DS 「…アラ?」

コッチもつかない。 その時気が付いた。

 DS 「この部屋…暗すぎる…」

そう、寝るときでさえ、デジタル時計の表示やコンポの日付表示灯は点灯してるハズ。
だけどこの部屋…

一切の明かりが無い。

 DS 「停電だぁーー!!」

玄関前の通路の電灯が付いてた事をすっかり忘れてる私。

その事はとりあえず考えないことにして、トイレへ行く私。
用が済んで水を流す。
勢いよく流れ去る俺の分身。

その後訪れる静寂…

 DS 「給水はどうしたぁーーー!!」

一人叫ぶ私。

嫌な予感が頭をよぎり、ガスレンジへ急ぐ私。
コックをひねっても「シュー」の音がしないガスコンロ。

 DS 「風呂はどうすんだぁーーーー!!」

既に水が止められてる事を忘れてる心の叫び。

そして甦る、帰省前の記憶…
電気・ガス・水道代を『口座引き落とし』にする前だったので、催促のお手紙が何通か届いてた事実。

 DS 「やられたぁーー!!公共事業にやられたぁーー!!」

誰が悪いって、払い忘れてた私が悪い以外の何モノでもないんですけどね。
電気・ガス・水道を止められた人間が過ごす一晩…想像を絶する恐怖です。
何もすることが出来ない。

次の日、慌てて公共料金を支払いに行った所



「祝日は受け付けておりません。」



「やられたぁーーー!!敬老の日にやられたぁーーー!!」

2日連続、そんな生活を強いられるとは思いもよらず。
ただ叫び声がむなしく響く。