Out of standard #18
初めてのアダルトビデオ
<attension! 男の悲しい性(さが)が含まれています。その手の話が苦手な方はご遠慮下さい。>

中学生の頃、クラスに一人はいるタイプの「物知りエロ博士」がいました。
彼はある日、私と友人数名に小さな声でこうささやいたのです…

 エロ博士 「いいエロビデオあるよ…」

そう、大阪では千日前裏通り、東京では新宿二丁目裏通りあたりを夕暮れに一人で歩くと出会う、
知らないおじさんがそっとつぶやくような口ぶりで博士はそう言ったのです。

 DS(思春期) 「え?マジ?どんなん?」

 エロ博士   「…無修正。」

中学生男子にとって、「無修正」、「ノーカット」、「流出モノ」といった単語が
どれだけパワーを与える言葉であるか。
女性の方なら「バカみたい。」と思われるかもしれませんが、男ってそういうものです。

しかしながら、その時僕は迷いました…
他の友人達が「行く行く!絶対見に行くよ!」と喝采をあげる中、真剣に悩んでました。
なぜなら、その時の僕は、『アダルトビデオ』なる物を見た事がなかったからです。

『無修正』とは、いわゆる「そのまんまモロに見えてるビデオ」をさす言葉…

  ”生まれて初めて見るアダルトビデオが『無修正』でいいものだろうか?”

  ”最初はもうちょっとソフトなものから見た方がいいのでは?”

僕の頭は「恥じらい」と「ためらい」、そして「本能」とが熱い戦いを繰り広げていました。
…理性は働かなかったのか。

しかし、即答しなかった僕を見て何か察したのか、博士が静かに呟く。

 エロ博士   「お前…もしかして見るの初めて?」

 DS(葛藤中) 「え?! そ、そんなわけねーだろっ。バカ言うな。」

バレバレだ。
当時の私は、今ほど上手に嘘がつけない不器用な人間だったし。
結局は、私の心の中で
 『恥じらい・ためらい連合軍 VS 本能帝国軍戦争』
の決着がつく前に、博士に怪しまれないように「行くよ。」と返事をしたものの、
実際は当日まで迷いに迷いました…

(心の中の)本能帝国軍から提出された妥協案、
 「当日までに普通のアダルトビデオをレンタルして見ておく。」
というのが一番よいとも思われたが、
(心の中の)恥じらい・ためらい連合軍から
 「そんな恥ずかしいマネ、出来るわけない!」
と一蹴され却下。

そして当日…

長引く『恥じらい・ためらい連合軍VS本能帝国軍戦争』に『正当化王国』が調停和平に乗り出し決着。

 ”とりあえず、「行く。」と約束したものは守らないといけないよな。”

と自分に言い聞かせて博士のうちへ。

博士が取り出してきたビデオには、しっかりと『無修正モロ見え!』のうたい文句が…

 エロ博士 「実は俺もまだ見てないんだ。
        朝から晩まで、家族の誰かが居間にいるモンでね。
        今日は幸い、みんな用事がある日だから集まってもらったんだよ。」

大家族ならではの悩みだなぁ。などと思いつつ、近づきつつあるその瞬間に緊張は隠せなかった。

ビデオがセットされ再生が始まる…
 「いよいよか…」

綺麗なお姉さんが登場…
 「この人が無修正…」 訳のわからない事を考える。

怪しい男性も登場…
 「この人も無修正…」 もはや無修正の意味が分かってない自分。

妙な演技と、棒読みのセリフが交される…
 「ストーリーがあるのか…」 無駄だな、と思う。


そしてその瞬間が!

 エロ博士   「アレ?」

 DS(ピーク) 「モザイク…入ってるよね?」

慌てて早送りをする博士。 しかし、結局最後までモザイクはかかりっぱなし。

男性なら分かっていただけると思うが、
ビデオに書かれてる「無修正」、「モロ見え」ほど、あてにならない売り文句もないのである。
「一体、何が無修正でどこがモロ見えなのか?」
未だに僕も分からない。

ともかく、生まれてはじめて見たアダルトビデオが「早送り」だった私。

ついでに言えば、内容もノーマルなものでなくSMモノだった私。

結果としては最低のAVデビューじゃないだろうか?