Out of standard #22
「野良犬」
ある日の早朝、”心のオアシス”コンビニへ行って来た時の話。
帰り道、まだ薄暗く人気も全くなかったので、道路の真中を堂々と鼻歌交じりで歩いていた所…
50Mほど前方に何か発見。
「…犬?」
犬です。しかもノラっぽいです。
軽快な足取りでこちらへ向かってくるようです。
10メートルくらいの距離を残した所で立ち止まり
野良犬くん、ゆっくりと牙をむく。最悪。
『最も悪い』と書いて「最悪。」と言うなら、この場合は
『極めて悪い』と書いて「極悪。」と表現したい。
何気に歩道へ寄ってみた所、野良犬くんも追いかけてくる。
付かず離れずの距離を保って牙をむくノラ。
どっかに猟銃持ったイギリス人がいるんじゃねーか?と思うくらいに的確なポイントの仕方だったね。
猟犬の素質ありだね。
冷や汗が止まらないので、そーっと買い物袋を置いて様子を伺うワタシ。
…やった!さすが動物、置いたものに興味を惹かれたらしい。
しょせんはケモノだね。本能でしか動いてないのさ。
買い物袋から後ずさりして、既に「逃げ」の体勢は準備OK。
あとはそのタイミングを計るだけになった時…
犬が近付いてきた!今だ!
さっと動いたのに反応して、犬もすかさず臨戦態勢に…
と思いきや、何気に腹出して「服従のポーズ」をとってるノラ。
…可愛いじゃないか。
さっきまでの牙剥き”敵意”丸出しの姿勢はなんだったのさ?と語りかけたくなるほどの変わりよう。
一応警戒しながらノラに近付くと、体をくねらせて「腹なでて、なでて。」と言わんばかりに舌を出してもがいてるノラ。
摩擦で火が出るくらい、なでてやった。
近くで見ると意外なほど毛並みがキレイ。
「コイツ、首輪ないけど飼い犬だな。…それか、捨てられてまだそんなに月日がたってないか。」
後者なら自分勝手な人間の被害者だから可哀想だと思いつつ、
どうやらお腹がすいてるように見受けられたので、買ってきたばかりのコンビニおにぎり(シャケ)を開封。
それを見て立ち上がり、すっかり視線がおにぎりに釘付けなノラ。
「よしよし、今おにぎりあげるからな…」
プチ・ムツゴロウの誕生。
もう少しで犬と舌の舐めあいをするレベルにまで打ち解ける俺とノラ。
おにぎりをノラに差し出す俺。
くわえるノラ。
笑顔で見守る俺。
おにぎりを地面に落とすノラ。
笑顔で見守る俺。
落ちたおにぎりの匂いを嗅いでるノラ。
笑顔で見守る俺。
おにぎりを無視して走り去るノラ。
笑顔で固まる俺。
「食っていけーーーーーっ!!!」
…せめて持っていけ。