Out of standard #28
新潟の暑い夜 完結篇

さて。
前回までのあらすじ… は、前回を読んで下さい。

といった訳で、運転手さん何を思ったか、既に『次は新潟駅前』とアナウンスも表示もしておきながら、
寝ぼけた俺を一つ前の停留所へ降ろしやがったワケでありまして。
(この事を友人に言ったら、「普通、終点で降りるのにボタン押す人はいないからねー。
 ボタンを押す、って事は「手前の駅で降りるんだ」と思ったんでしょ。」と言われた。 …納得。)


まぁ、言うても一つ前の停留所な訳だしね。
歩いて歩けない距離でもないでしょー。とタカをくくり、
とりあえずドッチに向かって歩けば駅なのかも分からないので、
奥さんが新潟市民である、新婚・カミーノへ電話して聞く事に。


  DS  「あ、カミちゃん?俺俺。 あのさぁ、間違って一つ前の停留所で降りちゃったんだよねー。
       新潟駅には何を目指して歩けばいいかな?」

 カミーノ 「一つ前で降りちゃったの? えーっと…近くに何がある?」

  DS  「うんとね… あ!向こうに『トイザらス』があるわ!
       確か、前に皆で来た事あるから分かるよね?
       国道を挟んで右手にトイザらスが見えるんやけど、ドッチに向かって歩けばよい?」

 カミーノ 「…トイザらス…」

  DS  「ん? もしもし?聞こえない。何? ドッチに向かえばいいの?」

 カミーノ 「…トイザらスだと…」

  DS  「そう。トイザらス。」




 カミーノ 「めーっちゃくちゃ遠ーいよぉー。(重々しく)

  DS  「え?」

 カミーノ 「遠すぎるって。車でも結構かかるのに歩きじゃ尚更だよ。
       トイザらスから駅までは遠すぎるって。タクシー拾いなよ。」

  DS  「マジで? 参ったなぁ。必要分しか金持ってきてないから、
       下手にタクシー乗ると帰りのバス乗れないぞ。」

 カミーノ 「でも歩くと一時間は余裕でかかるよ。」


あまりにカミーノが「無理。無理。」を連呼するので、天邪鬼なオイラの心に火がついてしまいました。


  DS  「歩いてみせるよ。あぁ、歩いて辿り着いてやるともサ。」


電話越しに心配するカミーノをよそに、俄然やる気が出てきた俺。
とりあえず、ドッチに向かえばいいのか見当がつかないので通行人に聞いてみる事にする。

…どうせなら可愛い女性に聞く事に追加決定。


向こうから自転車に乗ってきた女の子発見♪

  DS  「あの、すいません。」

 女の子 「はい?」

  DS  「新潟駅には、ドッチに向かって歩けばいいでしょうか?」

 女の子 「…新潟駅…」

  DS  「そう。新潟駅。」




 女の子 「めーっちゃくちゃ遠ーいよぉー。(笑顔で重々しく)

  DS  「 (同じリアクションだよ…) 」

 女の子 「歩いてはしんどいよ。タクシー拾ったら?」

  DS  「 (同じ対処法だよ…) 」

 女の子 「確か…このまままっすぐ歩いて、県庁が見えたら右に曲がって歩けば着くと思うよ。」

  DS  「このまままっすぐで、県庁を右ね。」

 女の子 「正確には、『延々とまっすぐ歩いて、右に曲がってウンザリするほど歩けば』だけど。」


イヤな所を正確に表現する子だなぁ。と思いつつも、御礼を言って行軍開始。



まっすぐ歩いても歩いても、県庁はおろか道路標示に「至 新潟駅」の表記さえ出ず。



延々と歩いてウンザリしかけた頃、はるか前方にようやく県庁を発見!!!


ちょっとまて。
あの女の子…「延々とまっすぐ歩いて、右に曲がってウンザリするほど歩けば」って言うてたけど…
『延々』と『ウンザリするほど』って、どっちの方がよりLONGER?

ニュアンス的には「ウンザリするほど」の方が距離が長そうなんだけど…
関東のJR列車発車予告の『次』と『今度』くらい、微妙なニュアンスだな。
でも今回はシャレにならない。
既に足は痛いし、汗だくだし、暗くなってきたし、
8時までにホテルに着かないと予約をキャンセルされちゃうし。

考えるのをやめて歩く事に再び専念。




路地に出る。


絶対オレ道間違えてるぅーーー!!

泣きそうな顔で、道を聞くために人を探す。


人が見つからない。だって路地だもん。


オレ、のたれ死んじゃうのかなぁーーー!!



引き返す。
人と出会うまでひたすら引き返す。
もう、聞く相手はオッサンでもヤクザでもいい。誰か道を教えてくれ。


数分後、大通りに出る。
人の姿も普通にチラホラ見受けられる。


欲を出し、可愛い子を探す。




可愛い女子高生発見!

  DS  「すいません。新潟駅にはどう行けば…?」

ここで何が一番怖かったかというと、彼女に
 「え?方向全然違うよ。
って答えられるのが一番怖かったと思う。
この時点で既に1時間以上歩きつづけてるし。あたりは真っ暗だし。

女子高生 「新潟駅ですか? このままアッチへまっすぐ歩けば行けますよ。」

彼女が 「アッチ。」 と指差した方角を見る。

…さっき迷い込んだ路地の方角…

  DS  「あのぉ…あっち行ったら路地に入っちゃったんですけど?」

女子高生 「いいんですよ。その路地を抜けると大通りになりますから。」


不思議の国・新潟!


  DS  「あ…そうなんですか…」

女子高生 「私も同じ方向なんで、途中まで一緒に行きましょうか?」


ええ子やぁーーーーー!!(涙)
めっちゃええ子やぁーーー!!(鼻水)



そんな訳で、心身ともに疲労困ぱいながらも、
彼女と世間話などしながら繁華街まで案内してもらった私。
「このまま、もうちょっとまっすぐ行けば駅に出ますよ。」と言い残し「じゃあ。」と笑顔で去ろうとした彼女。
純粋に100%感謝の気持ちを込めて

「一緒にお食事でも? もちろん、お礼におごりますよ!」

と誘ったら、


「イヤ。」

と即答されたよ…


生まれて初めてだぁ。 感謝の気持ちを言葉にして
「イヤ。」
って一言で片付けられたのは。


「じゃ、コレで何か美味しいものでも食べて。」って言ってお金渡すのもメチャ失礼だし、
とにかく「ありがとー!!」って彼女の姿が見えなくなるまで手を振って叫んだよ。(コレはコレで迷惑だろうか?)



無事、7時半に駅前のホテルへチェックイン。フロントでサインしてる時のオレの顔は半べそだったね。
て言うか泣いてたね。
とにかく無事に着いてよかったよかった。
誰かと抱き合って感動したい気持ちで一杯だったよ。




まぁ、チェックインしたその後、また違う意味での精神疲労を体験したんですけどネ。


それはまた、別の、ハナシ。(森元レオ調)


およそ8キロに及ぶ道のり