Out of standard #29
新潟の薄ら寒い夜
<attension! 不気味な話が含まれています。その手の話が苦手な方はご遠慮下さい。>

就職活動の関係で、新潟市でホテルに一泊したのは前に話した通りです。

ホテルに初めて泊まったのは、中学生の頃に行った修学旅行。
結構大きな部屋だったけど、6〜7人詰め込まれて(明らかに部屋の定員オーバーだった)寝た記憶が。

で、修学旅行定番の怖い話にも展開するのね。
ある友人が言った言葉。

「ホテルって大抵、壁に絵がかかってるんだよな。
 あれって、別におしゃれとかじゃなくて、お札を部屋に置いておく為にあるんだゼ。」

「どーいう意味?」

「客が部屋に入ってテレビの横とかに魔除けのお札とかあったら気味悪いだろ?
 仏壇だって置く訳にいかないし。
 だから、ホテル側は分からないようにお札を隠して置いておくんだよ。」

「…つまり?」

「つまりね、その部屋で自殺とか殺人とかがあった場合、
 その部屋の額縁の中にお札を入れるんだよ。」

「…額縁の中にお札があったら…」

「過去にその部屋で自殺とか殺人とかがあった、って事だな。」


そんな嘘とも本当とも取れない気味の悪い話を、よりにもよって10年経ったその日の夜に思い出した俺。

…ベッドの横には小さな額縁が。

しかもその飾ってある絵が、子供を抱いた女の絵。
しかも、その女性の顔色…なぜか灰色。子供の方は顔が見えないし。


  「ホテル側は分からないようにお札を隠して置いておくんだよ。」


そんなバカな。 中学生が考えそうな怪談じゃないのさ。バカバカバカしい。


  「ホテル側は分からないようにお札を隠して置いておくんだよ。」


いやぁ、別に怖いわけじゃないけどさぁ…


  「ホテル側は分からないようにお札を隠して置いておくんだよ。」


あぁ、友人のセリフがリフレインしてやかましい。
分かったよ。
確かめればいいんだろ。
その話を聞いた修学旅行の時だって、どの部屋にもお札なんて無かったし。どうせ作り話だ。


額縁を手にとって…

ひっくり返す。




ちっちゃい釘みたいなもので止めてあって、額縁が開けられないようにしてある…


何で…


止めるなら四隅でいいだろうに…







何でこんな、10個所も止めてあるの?





気味が悪かったもんだから、額縁を外して寝たよ。
それも、単に置いてただけじゃ怖いから、備え付けの「エロビデオ・カタログ」に挟んでやった。


でも起きた時、その事をすっかり忘れてて

 「絵がなくなってる!消えた!消えた! だぁーれかぁー!!」

って、小パニック起こしたけどね。



これで、絵を見て、絵の中の女の人の顔色が赤くなってたら面白かったんだけど。
さすがにそれはなく。相変わらず顔は灰色。


とにかく、ホテルに一人で泊まるのはもう嫌ザンス。




後日談。

ホテルで働いてる友人に聞いたところ、

「そんなことしないよー。」

とのこと。
逆に、その部屋で自殺があろうが殺人があろうが、
知らん顔で使用するのだそうな。


ただ、分からないように塩を盛ったり、
ごくまれに、開かずの部屋となる場合もあるそうだが…