Out of standard #39
三冠王改造論

日本プロ野球界において、選手達が「日本一」の栄光とは別に夢見る偉大な記録。
ピッチャーでは『完全試合』、そしてバッターでは『三冠王』。

完全試合。
被安打ゼロ。四死球ゼロ。完全に相手チーム打線を封じた者が達成しうる記録。

ただ一つの四死球に泣く者があり、
味方打線の援護に恵まれず途中でマウンドを降りる者があり。
その道のりが困難だからこそ、そこにドラマが生まれる。

三冠王。
打率、打点、本塁打全てがリーグトップの成績を残した者にのみ贈られる名誉。

これなのよ。
いや、完全試合はね、言うたらピッチャーの腕次第では何とでもなるじゃない。
メチャメチャ調子が良ければさ。
それに一試合で達成できるし。

でも三冠王。
松井惜しかったねー。
三冠王に限らず、最近のリーディングバッター争いって凄く後半がつまらん。
シーズン後半になると、首位打者が規定打席を越えてれば打席に立たせないし、
ライバルのバッターに対しては敬遠とかして、あからさまに

 チーム単位での擁護&いやがらせ

があるように思う。

今回も首位打者の福留、途中からバッターボックスに立ってなかったでしょ。
いかんだろ。それじゃ。

ファンあってのプロなんじゃねーか?
ファンが見たいモノを提供してこそのプロじゃねーのか?

だから考えた。
三冠王争いのあるべき姿を。


だいたい、シーズン後半によく見られる

 ライバルのバッターに対して敬遠

あれいけません。中途半端で。

ファンからは
 「勝負しろやぁ!」
とブーイングの嵐です。みんな分かってます。
でも両監督ともポーカーフェイス。素知らぬ顔。
最悪なのは、投げてるピッチャーも敬遠されるバッターも、

 「仕方ない…。」

とか言わんばかりに冷静を装っているところ。
つまらんって。もっと感情爆発させようや。


打率争いが肉薄。首位のバッターとの打率差は3厘差とかの時。
首位打者は打率が変動しないように早々とスターティングオーダーから外されてる。
試合前、バックスクリーンのオーロラビジョンに
首位の福留がサングラスをかけ、金髪ねーちゃんをはべらせてワイン片手姿で登場。

  「松井さんよぉ、最近なんか調子こいてんじゃんねーのぉ?
  打点と本塁打トップだからって、今度は打率までトップになりたいってか?
  人間、謙虚さが大切だよー。
  まあ、キミには汗だくになって泥まみれになる姿がよく似合うからいいけどさぁ。
  あんまり面倒かけさせないでくれるぅ?」

と、あきらかな挑発。
ざわつく巨人ベンチ。黙ったままスパイクを履いて用意する松井秀喜。

 「痛っ。」

松井のスパイクに入れられていた画鋲に気付く巨人ベンチ。

 「バレリーナのイジメかコラァ!」

早くも試合前に怒り沸騰の男・清原。中日ベンチに殴り込み。

 「白鳥の湖踊らせるどワリャァ!」

早くも試合前に退場処分の男・清原。

 「大丈夫です。試合には出れます。」

あくまでも夢を実現させるために冷静さを装う松井。
一種異様なムードが漂ったまま試合が開始。


第一球。
中日ピッチャー川上渾身のストレートが、先頭打者・清水の頭部直撃。
ヒザから崩れ落ちてピクリともしない清水。

再びオーロラビジョンに映し出される福留。

 「ギャハハ! 川上さん、手加減ナシっすねぇ!」

振り返ってオーロラビジョンに親指を立てる川上。

 「松井よぉ。ああなりたくなかったら大人しくするんだな。
  次はお前の番だぜ!ギャハハ!」

オーロラビジョンから福留の姿が消えるとともにベンチから飛び出す巨人ナイン。
両軍入り乱れての大乱闘。

 「ワリャァ、ドタマかち割ったろかーい!!」

バット片手にナゼか乱闘に参加している、男・清原。
3人を仕留めたものの、川上を逃し悔しがりながら強制退場させられる男・清原。

会場からは清原コールが。
担架で運ばれる瀕死の清水と、清原にやられた中日の3選手。


試合再開後、いよいよ松井がバッターボックスに立つ。
中日ベンチは多数のレーザーポインターを松井に向け妨害工作。
顔中赤い点々だらけの松井の目は、静かな闘志に燃え川上一点に集中。

そこで再度オーロラビジョンが。
そこには頭を包帯でグルグル巻きにされた清水の姿が。

 「松井! 俺なら大丈夫だ。
  相手がどんなに汚い手段を使ってきたとしても、俺たちは栄光の巨人軍だ!
  正々堂々と、紳士らしく闘って、胸を張って三冠王を達成してくれ!」

いつしか、球場のあちこちから「闘魂こーめーてー♪」と巨人応援歌の合唱が始まる。

 「そうだ!松井!俺たちは栄光の巨人軍だ!
  子供達に夢を与えるためにも、正々堂々闘おうじゃないか!」

巨人ベンチでは腕を組んだまま涙を流す原監督の姿が。
静かにマウンドの川上に視線を戻す松井。

戸惑いながらも、松井に対して第一球を投じる川上。
外角低め、ギリギリいっぱいに鋭いストレートが投げ込まれる。
松井、一瞬のためらいもなくフルスイング。



キャッチャー谷繁のミットに収まるボール。



ピッチャー川上の顔面に突き刺さるバット。




 「俺は三冠王獲ってメジャーに行きたいんじゃぁー!!」

そう叫ぶなり、中日ベンチに殴り込む松井秀喜。
ベンチ裏から飛び出してきて参戦する男・清原。
腕を組んだまま涙を流す原監督。

球場からは「まーわるー まーわるーよ時代ーはまわるー」と「時代」の合唱が始まる。
金八先生の名シーンここに再現。





…そのくらい、私利私欲をぶつけ合った露骨な試合展開を希望。
やっぱり野球は優勝が決まった後も、個人成績争いで盛り上がるべきだ。